1月21日~22日に岐阜県可児市と岐阜市に視察に行きました。
12月の大和市は自費でしたが、今回は「議員派遣」の枠を使わせていただきました。
報告書を提出することになっていますので、その内容をこちらにも掲載いたします。
■1日目 可児市
〇概要
岐阜県可児市は岐阜県の中南部に位置しており、昭和40代後半から住宅団地の開発が進んだことにより、名古屋都市圏のベッドタウンとして都市化していった。人口は10万1500人(平成30年3月1日現在)で、その約6.5%は在留外国人。
今回の視察の可児市文化創造センター(アーラ)は、日本ライン今渡駅から徒歩10分の場所にある平成14年に完成した公立文化施設で、建設工事費が約128億円3700万円(その内文化センター建設基金と一般財源で約53%)、主劇場(1019席)、小劇場(311席)のほか、ギャラリーや各種スタジオ、会議室、レストラン等を有している。
当該施設の特色は、現館長(衛紀生氏)就任以来の取り組みである。文化芸術の持つ社会包摂機能を発揮しており、「公立劇場は地域課題を解決する社会機関の1つ」と館長は考えている。
具体的には、子育て支援、市民の生きがいづくり、多文化共生などを目的として「アーラ町元気プロジェクト」を推進しており、年間400回以上実施しているワークショップの取り組みに延べ8000人の市民が参加。アーラは文化庁の「劇場・音楽堂等昨日強化推進事業」「共同制作」事業に採択されており、平成29年度には可児市が文化庁長官から表彰(文化芸術創造都市部門)を受けた。
〇所 感
アーラのホームページでも館長の連載を見ることができるが、その内容、考え方は自分自身のこれまでの文化芸術施策、文化施策の考え方を根本から考えさせられた。まさに目からうろこであった。「文化芸術は、一部の愛好家のもの」「市の財政が厳しくなれば真っ先に削っていくもの」ではなく、市民の税金を投じた施設であるからこそ、普段芸術に触れることがない、あるいは触れることが状況的に難しい市民にこそアプローチをかけ、地域課題の解決を使命とする。そのことから、単に著名人を呼んで公演をすれば大勢の来場があるかもしれないが、それは「最大瞬間風速」でしかなく、興行をするだけでは公立劇場の意義はないと館長は述べているようである。
こうした社会的包摂機能を発揮してくためにも、「マーケティング」を重視していると感じた。芸術監督よりも経営監督が必要だと論じる。「何を観るか」ではなく、「どこで観るか」という価値創造し、「顧客」から「支持者」になってもらうことを意識しているということであった。
また、館長は人材育成にも力を入れており、月2回程度の館長ゼミを実施。自らのDNAを後輩へ継承するとともに、財団職員の雇用環境の改善に努めている。今回の説明者の二人は行政職員であるが、他の職員はほぼ財団の正規職員であり、給与は行政職に準じているとのことであった。5年という指定管理では人材育成が難しくなり、やがて文化芸術は破綻すると言われているようである。
アーラはユニークなチケット制度やおもてなしの取り組みにより、来館者数が館長就任以来大幅に伸びたようであるが、最も参考にすべきはその運営、経営手法ではなく、考え方や理念であると理解できた。また、レストラン(近隣のシティホテルが経営)のサービスに関してもアーラと密なやり取りをされており、市民はレストランだけの利用もしているようで、茨木市の新市民会館にどういったものを入れるかは重要であると感じた。今回得られた視点をもって、本市の新市民会館事業の検討をしてきたいと思う。
■2日目 岐阜市
〇概要
岐阜県岐阜市は岐阜県の南部に位置する人口40万9900人(平成31年1月1日現在)の都市で、現在みんなの森ぎふメディアコスモス(以下、メディアコスモス)の真向かいに新庁舎を建設中である。
メディアコスモスについては、岐阜駅から徒歩圏内ではなく、バスで北に9分の場所にある。平成16年度に岐阜大学医学部・附属病院が移転し、その跡地利用について市民意見募集を経て、17年度に基本構想が策定された。22年度には基本計画が策定され、第1期として複合施設(中央図書館、交流センター、ギャラリー等)、第2期として行政施設(新庁舎を想定)、第3期として市民文化ホール(想定)が盛り込まれた。同年度に資質評価型プロポーザル方式で、茨木市議会の研修にもお越しいただいた伊東豊雄氏が設計者に選定され、平成25年度にJV方式による工事着手、平成27年2月に完成した(開館は同年7月)。当施設には中央図書館、市民活動交流センター、展示ギャラリー、多目的ホール(230席)、多文化交流プラザ、オープンテラス、スターバックス、ローソンがある。なお、事業費は約125億円。
平成29年11月までで来館者数300万人を超え、旧図書館時代よりも約8倍強の来館者数と試算しており、利用者層は40歳以下の割合が約30%から54%へと変化した。
〇所感
メディアコスモスの特徴は何といっても建物デザインである。まずは全体的に壁が少なく、オープンな空間となっている。一体感を生み出すような視覚的関係を内外に創り出すとのことで、「まち」のようなデザインとなっている。1階のオープンテラスや展示ギャラリーでは、講演会や簡単な演奏会などを実施でき、壁がないため、来館者が「何をしているのだろう」と気軽に立ち寄れる空間となっている。
また、非常に特徴的な屋根は、木製の格子であり、構造面、衣装面、環境面でも十分な性能を持っているようである。2階にはグローブと呼ばれる小さな家があり、これらが自然光を柔らかく室内に拡散し、壁の代わりに何となく空間を区切っている印象を受けた。
この2階が図書館となっているが、本棚が曲線を描いていて、目当ての文献を探すのが難しいようにも感じたが、一方で次の書棚にはどんな本があるのだろかという探求心をくすぐられているようにも思えた。
なお、本施設が完成したことにより、中心市街地エリアを本施設まで含むように再設定され、中心市街地活性化の観点からも徐々に施策を展開しているようであるが、いかに市民に回遊してもらうかは課題に感じられているようであった。
今回の視察を通じて、よりよい建築デザインがいかに人を呼び込み、居心地の良い空間を創出するという点、また中心市街地における施設の位置づけと展開について示唆を得られた。