平成28年12月5日の本会議質疑
インクルーシブ教育について(要旨)
1、小中学校のインクルーシブ教育について
①インクルーシブ教育と特別支援教育の考え方について
・まず、流れとして
平成19年に改正学校教育法施行 特別支援教育が法制化
平成24年 特別支援教育の在り方に関する特別委員会の「初等中等教育分科会」から「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」が出された。インクルーシブ教育は
その中の「共生社会の形成に向けた今後の進め方」
⇒短期・中長期に進めていくとなっていて、「短期」については、平成26年障害者権利条約批准までの話なので、現在となってはこの話は終了。今は条約批准後の話で、「中長期」は批准後10年程度を想定。
環境整備、教職員の研修の充実や専門性向上のための方策を検討する。
平成25年 24年の報告を踏まえて、学校教育法の施行令一部改正
(平成26年1月 障害者権利条約批准)
平成28年4月 障害者差別解消法施行 合理的配慮
ⅰ)インクルーシブ教育と特別支援教育の理念を本市はどのように認識しているか
ⅱ)これまで国の方では法制化や条約批准などされてきた。
⇒批准からもうすぐで3年なる。中長期の取組みとして、茨木市の現状は。
ⅲ)小中学校での学びの場はどのようなものがあるか(選択できるか)。
ⅳ)また、障がいのある子ども、その保護者から、小学校中学校に進むにあたっての相談があれば、どのように対応しているか。
答弁
ⅰ)理念
インクルーシブ教育:障がいのある子どもと障がいのない子どもができるだけ同じ場で共に学ぶことを目指すもの。
その実現のため、必要な合理的配慮が提供され、個別の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であるとされている。
特別支援教育:障がいのある子ども一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高めるため、適切な指導及び必要な支援を行なうものであり、インクルーシブ教育システム構築のためには必要不可欠。
ⅱ)茨木市の現状
これまでも障がいのある子どもの人権を尊重し、地域で「ともに学び、ともに育つ」ことを基本とした教育の推進に努めてきた。共生社会の実現をめざすインクルーシブ教育は本市が進めてきた「ともに学び、ともに育つ」教育が目指す方向。
今年度:障害者差別解消法の施行に伴い、法に則った適切な対応と取組みを一層進めている。
ⅲ)学校での学びの場
小中学校における通常の学級、通級指導教室、支援学級、支援学校といった「多様な学びの場」がある。
ⅳ)相談
相談される保護者のお子様が通われている保育所・園、幼稚園、通学区域の小中学校、教育委員会が相談の窓口となり、相談や情報提供をしている。
本市において、障害の程度にかかわらず、地域の小中学校から始まる就学相談を行なっている。就学相談では、保護者に適切な説明及び情報提供を十分に行なう+子どもの障害の状態、教育的ニーズの把握につとめ、必要な環境や支援の内容等について保護者と合意形成を行ないながら、本人・保護者の意見を最大限尊重し、就学先を決定している。
2問目
多様な学びの場における現状について
・大きな枠組み、考え方を伺った。多様な学びの場については、「通常の学級における支援」「通級指導教室」「支援学級」「支援学校」があると。また就学相談で本人と保護者の意見を最大限尊重する就学先、という答弁。
さて、平成23年に「中央教育審議会初等中等教育分科会の特別支援教育の在り方に関する特別委員会 論点整理概要」が出ていて、それによると、「子ども一人一人の学習権を保障する観点から、連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要」とされている。
学習権を保障していく、「多様な学びの場」の本市の現状についてさらに質問。
ⅰ)通常の学級における個別指導計画について
小学校、中学校における「支援が必要な子ども」については、個別の指導計画が作成されている。誰がどのような内容で作られているか。また、作成数は?ここ何年かで増えている?
→答弁:各校の支援教育の推進役を担う支援教育コーディネーターや学級担任、教科担任が連携して作成。主な内容:指導目標、支援方法、指導内容、評価。
支援が必要な児童生徒に対して個別の指導計画を作成し指導することを市教育委員会として推進しており、作成数は年々増加。H28(9月1日現在):小学校728人、中学183人。
ⅱ)支援学級について
・障がい種別は平成19年以前に比べ増えているか。どんなものがあるか(支援学級の変遷)
・支援学級における教育内容は。
・どういった職員体制で実施しているか。
・直近3年の小中学校の支援学級の合計在籍数は。
・以前、聞こえの教室があったような記憶があるが、無くなった背景は。そもそもどのような先生が教育にあたっていたのか。
→答弁
・支援学級の種別:弱視、難聴、知的障がい、肢体不自由、病弱・身体虚弱、自閉症・情緒障がい。平成19年以前と変わりなし。
・支援学級では、児童生徒一人一人の障がいを正しく理解する+個別の教育的ニーズを把握し、少人数による適切な指導や必要な支援を行なっている。
・職員体制:1学級につき1人の支援学級担任を配置。なお、障がいの程度が重度な児童生徒が複数在籍しているなど、学級担任だけでは支援学級の運営が困難な場合、市の臨時職員として介助員を要綱にもとづき配置。
・支援学級の児童生徒数:小中合わせて平成26年963人、平成27年1071人、平成28年1158人と年々増加。
・聞こえの教室:難聴学級の一つとしてセンター校に設置していた。現在はセンター校として機能している難聴学級はなし。背景:平成25年9月学校教育法一部改正、地域の小中学校への就学を希望する本人・保護者のニーズに応じて、すべての障がいの種別の学級を、どの学校にも設置することを推進してきたこと。
担当教員:長年にわたり「聞こえの教室」の担任として難聴児の指導・支援に携わる中で、専門的な知識と技能を高めてきた教員だった。
ⅲ)通級指導教室について
文部科学省の調査によると、「通級による指導を受けている児童生徒数」について、
小学校:平成19年度で約43,000人⇒26年度で75,364人にまで増。
中学校:平成19年度2,162人⇒26年度8,386人
・通級指導は以前と現在では内容が変わっているのか(変遷)。
・本市の「通級指導教室」は、どの学校で、どういった障がい種別で行なわれているか。職員体制は。
・小中学校の通級人数の3年間の推移は
→答弁
・指導内容:小学校では「ことばの教室」という愛称。開設当初から言語障害のある児童を対象とした指導をしてきた。平成18年の学校教育法施行規則一部改正により、発達障がいのある児童生徒の通級指導が制度化され、本市では、小学校5校、中学校1校にいずれも発達障がい学級として通級指導教室を設置。職員体制:国の加配教員として、各教室に教員1名配置。
・通級人数推移:自校に通う児童生徒は平成26年61人、平成27年75人、28年99人。
他校に通う児童生徒は平成26年65人、27年78人、28年94人、年々増加。
ⅳ)支援学校との連携について
以前は都道府県立の「盲学校」「聾学校」「養護学校」とされていたのが、今は支援学校に名称が統一されている。
・支援学校と本市の小中学校の連携の現状は
どの支援学校と連携しているか。どのような連携の内容か。
・通常学級に籍を置きながら、支援学校に通うことは可能か。
・児童生徒が市内の他校や支援学校に通うにあたって、交通費等のサポートを受けられるか。
→答弁
・障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導及び支援を行う支援教育の充実を図るため、各学校園に府立支援学校のセンター的機能を積極的に活用するよう周知し、各学校園の要請に応じて、各支援学校と連携を進めている。
連携する支援学校は子どもの障がいに応じて、知的障害は茨木支援学校・高槻支援学校・摂津支援学校、肢体不自由は茨木支援学校、病弱は刀根山支援学校、視覚障害は大阪北視覚支援学校、聴覚障害は生野聴覚支援学校と連携。
具体的支援:専門的な知識や技能を有する支援学校の教員による校内研修の実施、巡回相談、指導・支援方法の助言。+支援学校で行なわれる研修に学校園の教員が参加。
・聴覚支援学校には、通級指導教室が設置されているので、通常の学級に在籍している児童生徒が通級して指導を受けること可。
・支援学校または他校の通級指導教室に通う場合は、市の「支援学級等就学奨励費制度」により、市が交通費の援助をする。
3問目
今後の課題について
国からはインクルーシブ教育の理念が謳われ、合理的配慮の規定もある。そのなかで、国・府に頑張ってやってもらわなアカンことと、うちの市がどこまで担えるのか、担うべきなのかを考えていきたい。
まず、今のお答えでは、個別の指導計画の作成数、通級の人数、支援学級在籍数が年々増加しているということがわかった。就学相談により、児童生徒が地域の学校で学べるようにしてくださっていることは評価をするもの。
しかしながら、課題もある。
①人材育成と専門性を備えた人材の確保
例えば、聞こえの教室が無くなっている現状。
制度変更でどの学校にも「難聴学級」を設置する方向になったということは良いことだし、理解はした。しかしながら、専門性のある先生が退職されたことを機に、センター校としての「聞こえの教室」がなくなってしまい、教育レベルがちょっと下がってしまったのではないかと懸念する。一人の先生のご努力に頼るところが大きく、人材育成ができていなかったことが課題では。
さらに、支援学校の先生ついては、巡回相談来てもらえるが、しょっちゅう来てもらえるのかという問題がある。他方で、地域の小中学校の先生が一から障がい特性に応じた専門的な勉強をしていくのは大変だという問題もある。
だから必要なのは2つの観点。
教職員の中で支援学級を担当できるような人材を育てていく観点。市教委の研修の充実等ということ。
もう一つは、少しでも専門性を備えた人材を確保する観点。
例えば言語聴覚士とか、そういった専門支援ができる人を確保していく環境整備などが必要だと思う。あわせて、また支援学校からも引き続き市内の学校に巡回してもらうことも必要だと思う。見解は。
→答弁
専門家による支援については、学校において適切な合理的配慮を提供するためには、必要な支援であると認識しているが、支援学校のセンター的機能等、現在活用できる資源をより効果的に活用することで、障害のある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じたきめ細やかな指導・支援の充実に努めていく
②自校か他校か
通級人数も年々増えていて、94人児童生徒が他校に行っている現状がある。交通費については市から助成があるようだが、放課後に他校に行くということは、子どもたちの体力や学びに影響あるのでは。
それぞれの児童生徒、家庭の考え方はあるが、やはり他校ではなく自校で学べることがベターだとは思う。それには課題もあるかと思うが、
市として、どのように認識し、今後の対応を考えているか。見解は。
→答弁
他校に通級する児童生徒にとっては時間的、体力的な負担はあると認識。
市教育委員会としては、他校に通級する児童生徒の増加に伴い、通級指導教室の増設の必要性は認識しており、通級の増設は府へ要望している。
■意見・要望
・大阪府の方へ、巡回に回せるだけの人的配置を支援学校の方でしてもらえるよう要望してもらいたい。
・単に、障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に学び合うというレベルにとどまるのでなく、誰のための共生社会なのか、誰のためのインクルーシブなのか、インクルーシブ教育を通じてどのような子どもたちを育てていくか考えていかなければならないと思う。
共生社会の実現には、障害者に関心を向けることに留まるのではなく、自分以外の他者すべてと共に生きることに関心を向ける子どもたちの育成が求められていると思います。茨木の教育は益々のそのようなものであってほしいと申し上げて、質疑を終わる。